私たちは、発明者の創作されたアイデアを堅固な知的財産にするという権利化業務にとどまらず、
・イノベーション活動の推進のサポート
・現事業はもちろん、将来事業を考えた知財障壁づくりの推進
・知財部門の戦略作り
といった、知的財産活用の本質に迫るワーキング活動をご一緒に展開できればと考えています。
そのような私たちの考えを少しずつ共有して頂くために対談という形で、サイト上で随時当所の考えについてご紹介いたします。

第3回:CGC(コーポレートガバナンス・コード)視点で知財戦略を考える

対談メンバー/豊山おぎ(One Global Ip 代表) × 横山 勝(One Global Ip CIO)
コーポレートガバナンス・コードへの対応活動の現状に関して

豊山 おぎ
(以下/豊山)

2021年6月に新たなコーポレートガバナンス・コードが開示され、その中で新たに、知財・無形資産活動の明示を要求されることとなりました。 弊所でも、
 ・昨年の10月14日に第1回目のWEBセミナー「CGCと知財戦略」
 ・今年の1月25日に第2回目WEBセミナー「CGCと知財戦略-実践編」
を提供しました。 
また、株式会社サン・フレア様と共同で
 ・「コーポレートガバナンス・コードと知財」
との題目で、動画配信をさせていただきました。その中で、弊所のWEBセミナー、また株式会社サン・フレア様とコラボ開催した動画配信とも、たいへん好意的な反響をいただき、主催者側としても嬉しい悲鳴状態です。
さて、最初のWEB配信から半年ほど経つのですが、コーポレートガバナンス・コードへの対応活動に関して、どのような印象・また感触をお持ちですか?
横山 勝
(以下/横山)
正直ベースでお話しさせていただくと、まずは日本企業のPBR※の低さにまずは驚かされました。知ってはいたつもりなのですが、心から素晴らしいと感じていた企業がPBRが1に満たないというのにはびっくりしました。金融庁や東証が躍起になって「知財・無形資産」の向上というのは分かる気がしました。

※PBR=株価÷1株当たりの純資産=企業価値(株価総額)÷純資産

豊山

なぜ日本企業はPBRが低いのでしょうか?
横山
まずはPBRの式に注目する必要があります。例えば、私が関係していたパナソニックでPBR=1.1、王子ホールディングスは0.7なのです。また日本の重厚長大産業の代表である日本製鉄は0.5台です(いずれも、会社四季報・2022年新春号発行時点)。これは凄く奇妙なことです。PBRって初めて見る方もおられるかもしれないので、少しだけ詳しくお話しします。 ※のついた式を見て下さい。 ここで「純資産」とあるのは、その企業が解散した時に残るハードな価値、すなわち「解散価値」と言われるものです。 これより株価総額が低いという事は、ハード資産の上に乗っかっている会社を運営する仕組みや役員・社員またサプライチェーンを形成するステークホルダーに至るまでが、本来のハード価値を棄損して(信用を損ねて)いるということです。 私自身の意見を言わせていただくと、世界規模で構成された産業生態系の中で、付加価値を高くとれるビジネスモデル検討は、GAFAM※を代表とする米国の主要企業で行われ、品質高くコストは低く生産する、言い換えると付加価値の低い部分は、日本を代表とする東アジア(日本、台湾、韓国、中国など)に委ねられているためだと認識していました。 また先日、池上彰氏のご講演をお聞きしていたら「日本企業は安易に従業員を退職させることが出来ないので、社内に『失業者』抱えている。このためにPBRが低い」と仰っていました。それも原因の一つかと思います。

※GAFAM:Google(Alphabet)、Amazon、FaceBook(Meta)、 Apple、MicroSoft
単純に知財・無形資産を充実させれば、PBRは上がるのか?

豊山

PBRの分母にあたる純資産(解散価値)を削らないというのが前提とするならば、PBRの分子の株価総額を上げるというのは、株取引の中心になっている海外投資家に注目してもらうという事と認識しています。そのためには海外投資家から見てワクワクするような将来がその企業の前にないとダメだと思うのですが、それが「知財・無形資産」というといささか、飛躍があるように感じるのですが?
横山
その通りですね。内閣府のガイドラインを拝読しても、ビジネスモデルが重要であると述べています。そのためには「知財・無形資産」の充実と開示が必要という事です。

豊山

確かにビジネスモデルが重要であることは理解できますが、それが即、「知財・無形資産」に結び付くのでしょうか?
横山
この点に関しては、内閣府資料は、やや曖昧であると感じます。 本質からいうと、まずは優れたビジネスモデルを提案出来るような無形資産があり、それらをベースにしてビジネスモデルが作られる。それを戦略として展開する過程で知的財産が生まれるというのが、素直な流れではないでしょうか?経産省の「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」を参考に、分かり易く描き直した図「価値協創ガイダンス構造図」を示します。

豊山

お話しからすると、「知財・無形資産」というより、「無形資産・知財」としたほうが素直ですね。 
横山
おっしゃる通りです。

豊山

その上で、三つ質問があります。
 一つ目は、「価値協創ガイダンス構造図」は誰が廻すのでしょう? 従来の知的財産部門の活動範囲からは外れているように感じます。
 二つ目は、特にプライム市場上場企業に対する6月に義務付けられているコーポレートガバナンス報告書提出への対応に関する推進方法をどうあるべきですか? あまり時間がない中、知財部門やIR部門の方々は気にされているところだと思います。
 三つ目は、一つ目および二つ目の質問とも関連するのですが、経営トップによるガバナンスとその結果について投資家に如何に説明してゆくべきなのでしょうか?
横山
一つ目の「『価値協創ガイダンス構造図』は誰が廻すか?」ですが、
 ガイダンスには、「横断的な取り組みで」とあります。ただ、横断的な取り組みを推進する具体的な組織がないと実質は動かないでしょう。
 普通には、経営企画部門などが進めるべきなのでしょうが、私自身は知的財産部門が手を挙げる良い機会だと思います。

豊山

勇気をもって、一歩 前に踏み出すという事ですね。
横山
そのとおりです。二つ目の「コーポレートガバナンス報告書」に関しては、企業から投資家や金融機関に明示するべき最低限必要な項目です。以下に示すような事を意識して、IR部門とコーポレートガバナンス報告書を作成いただくべきでしょう。

・自社の研究開発力のアピール
・知財ガバナンスに関する説明
・知財の保有件数など定量的な数値
・他社との知財係争がある場合、それの明示
・社外からの評価(賞)などがある場合、無形価値として提示
⇒上記事項は、コーポレートガバナンス報告書では書き切れない切れない可能性があるので、それらが明示されているホームページ、統合報告書への誘導

豊山

三つ目の経営トップによるガバナンスの実行とその結果について投資家に如何に説明するかなのですが、「価値協創ガイダンス構造図」の中で経営トップがガバナンスすべき内容を充実させること自体がたいへんだと思いますが、一方で、その中身を投資家とはいえ、社外へ安易に開示することは危険だと考えます。
横山
まず経営トップによるガバナンスですが、その企業ごとでのKPI(Key Performance Indicator)をもって管理する事が良いと思います。今回の内閣府のガイドラインでも、エーザイやシーメンスの例が出ていました。参考になると思います。
 次に、如何に外部に開示するかという事ですが、やはり豊山さんがおっしゃったように、投資家にワクワクしていただける程度の内容は開示するべきです。 内閣府でのミーティングや、ガイダンスで、ソニー、ブリヂストン、旭化成などの事例が出ています。これらも参考にされれば良いと思います。

豊山

ありがとうございました。コーポレートガバナンス・コードに知財部門がいかに対応するのかということは、極めて重要な事であるの認識しています。
弊所としましては、皆さんのご参考になるように、定期的にWEBセミナーを開催して参ります。次回は、GWの連休明けの5月12日・18:00より予定しています。 
また、推進に関してお悩みの方々には、直接 弊所にご連絡ください。極めてリーザナブルな費用で、良いご提案ができると思っております。
ぜひ、お気軽にお声掛け下さい。どうぞよろしくお願い致します。
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